近所の川と亀じいさん 3


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いざ、川掃除へ

選ばれし者が集結

結局、段取りはAさん任せになりましたが、無事、川掃除の日を迎えることが出来まし

た。男性ばかり7人も揃いました。当然、亀じいさんもその中に居ました。

当初、もっと人を呼ぶかどうかで色々と話し合ったのですが、少人数の方がまとまるだ

ろうということで、少数精鋭でいくことになりました。

陣頭指揮は亀じいさんです。噂ではちょこっとボケていると聞いていたのですが、全然

ボケていないようで、さすが元教師って感じで的確な指示を送ってきます。

少し気になっていたのが、途中からまったく知らない人が2人増えていました。

想像通り、川は小さく、どちらかというと綺麗なので、昼前には終了かなと思うぐらい

作業量でした。

新たなミッション 

昼頃に、亀じいさんの奥さんが、みんなにお弁当を持ってきてくれました。その時、ひ

ねくれものの大笑は、「この弁当を食べたら帰えしてもらえんやん、、、」そう思いな

がら、お弁当をいただきました。

お弁当を食べ終わった後に、途中から合流した、人を亀じいさんが紹介した。

ご挨拶が遅れました。○○の○○と申します。今日は調査も兼ねまして、参加させていただきました

調査ってなんですか?

○○川のアカミミガメの繁殖状況です。

はぁ?

亀じいさんからのご依頼があったもので、、、昼から亀を捕獲していきたいのですが、ご協力いただけますか?

そんな話聞いてないよ~

凄く雰囲気が悪くなり、みんなの会話も一気に減りました。 

 

私は、亀じいさんが一人で亀を捕っていたことを思い出しました。

アカミミガメの駆除の必要性も、役所の説明で理解出来ましたし、急がなくても、いず

れ行政の力で駆除してくれるはずです。

それに、何故みんなに亀のことを黙っていたのか?事前に一言あっても良かったので

は?「何故???」

結局、亀じいさんからは何もありませんでした。

 

ただ一言「このままでは駄目だ」みたいな言葉だけ、、、意味不明(ToT)/~~~

 

亀にまつわる悲劇

その年は、あれっきり、みんなで集まることはなかったです。

Aさんも皆に申し訳ない気持ちがあったのか、あれから、亀じいさんの話はしてきませ

んでした。しかし、私の中では、一人で亀を捕っていた亀じいさんの姿が離れず、

本当の目的が何なのかも知りたかったので、Aさんに相談を持ち掛けました。

その結果、二人で亀じいさんの奥さんに時間をいただくことにしました。

奥さんは、亀じいさんには内緒という条件で分かる範囲でお話をしてくれました。

  • 亡くなった甥っ子と見た川の景色を取り戻そうとしている
  • それにはあのアカミミガメは居なくなって欲しい            

 奥さんもはっきりとは分からないが、アカミミガメが年々繁殖することで、亀じいさん

と甥っ子さんの想い出の何かが見れなくなってしまっている。自分が死ぬまでにもう一

度見てみたい。というような内容でした。

やはり、亀じいさんは甥っ子さんの事故を悔いているようでした。何をもう一度見たい

のかはよくわからなかったのですが、あのアカミミガメが居なくなれば解決するならと

Aさんともう一度、みんなに声を掛けてみようと決めました。

 

川掃除が再出発

何とか、賛同者を募り、掃除という名目で「亀駆除」を再開しました。亀じいさんを初

めて見かけたから5度目の夏がやって来ました。役所には、捕まえた亀の運搬と処分を

お願いしました。

まさにリアル「池の水ぜんぶ抜く」です。私は、あの番組が大好きなんです

まぁ川なんで水は抜かないですし、深い場所に逃げられると捕獲は無理なんですよ。

でも数十匹は捕れました。私の発案で子供会のイベントにしちゃいました。子供が動け

ば親も動くので人数は結構集まりましたよ。

ちなみに亀じいさんはそのイベントには顔を出してくれませんでした。

そしてそれから2~3年が過ぎ、本当にアカミミガメが居なくなりました。たまに見か

けるくらいです。

ただ、亀じいさんの謎は解らないままでした。

まぁどうでもよくなっていたのも事実ですが。

 

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想い出を取り戻す

実は、去年の夏に亀じいさんの謎が解けたんです。

Aさんから聞いた話なんですが、実はAさんが散歩中に、川べりに立っている亀じいさ

んを見たそうなんですが、川を見つめながら、泣いていたそうなんです。

しかも号泣していたそうなんです。

Aさんがビックリして声を掛けると、「〇〇が帰ってきた。」と甥っ子さんの名前を

しきりに口にしていたそうです。Aさんがふと川の方に視線をやると、一匹の大きなス

ッポンが優雅に泳いでいてそうです。亀じいさんに存在を示すかのように泳いでいるよ

うに見えたそうです。

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Aさんはすぐに私に電話を下さいましたが、あいにく仕事で遠方に、、なんともタイミ

ングの悪い奴なんでしょう、、、

 

Aさんは、亀じいさんから少し話を聞くことが出来たので、みんなにも聞いて欲しいと

いうことで、数日後の夜にいつもの居酒屋に集合しました。

Aさんによると、昔、亀じいさんは甥っ子さんと、よく川に魚を採りに行っていた。そ

の時に、よく見かけるスッポンを「川の主」と呼んでいたそうで、甥っ子さんもよく川

にスッポンを見に行ってたそうです。そんな中、事故で命を落としてしまい、亀じいさ

んは責任を感じ、川にはあまり近づかなくなっていたそうです。

しかし、甥っ子さんとの思い出の場所が、気が付けば見たこともない亀に占領され、

「川の主」は居場所をなくしてしまった。甥っ子さんとの思い出の「川の主」にもう一

度会いたくて、アカミミガメが居なくなれば、「川の主」は再び姿を現せてくれるので

はないかと思い、アカミミガメを一人で駆除していたそうです。

甥っ子さんと「川の主」を重ねてみていたのかも知れませんね。

 

そんな亀じいさんは、先日、他界されました。今年に入って、お会いすることもなかっ

たのですが、入院されているというのは聞いておりました。Aさんとお見舞いも考えた

のですが、コロナの件で、それも叶わず、お別れとなりました。

 

ただ、みんなに宛てた手紙を拝見し、

「川を愛してくれて、ありがとう」

「〇〇との思い出を取り戻してくれたみんなに感謝しております」

自然と涙がこぼれました。私は何も知らないとはいえ、亀じいさんへの失礼な態度を悔

やみました。

それと同時に、昭和の時代を生きた頑固おやじ、悲しい後悔の念を一身に背負い生きて

こられた生き様に敬意を感じました。

亀じいさんは最後まで教師だったのかも知れません。私は、色々なことを教えられたの

かも知れませんし、Aさんを始め、たくさんの仲間を得ることが出来ました。

何より、次は私たちが、次世代に繋げていくことが大切なんだと気づかせてくださいま

した。

亀じいさん、ご冥福を、、、なんて言うつもりはないから、次に川掃除をするときは化

けてでも出て来て手伝えよ~っ by大笑&その仲間たち

 

読者の皆様へ

最後までお付き合いいただいた読者の皆様、本当に長々とすみませんでした。そしてあ

りがとうございました。読んでいてつまらない思い出話ですが、亀じいさんの訃報を聞

き、私にとって絶対に残しておきたい内容だったので公開させていただきました。