結果オーライ、それも人生さ【中編】


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こんにちは、大笑です。

金銭トラブルで、社内はギクシャクしていました。

特に、お局ちゃんは、気持ちが沈んでいるようで、今まで無かったようなミスをしたり

笑顔も減ったように感じました。

 

我が盟友、お局ちゃん

大笑が暴れる、そしてゴリラの尾を踏む

お局ちゃんはいつものような笑顔も、生意気さも息をひそめてました。

お金は出て来ましたが、疑われたことがショックだったのでしょう。

私は、彼女の事が心配でした。

予想通り、ある日を境に、お局ちゃんが会社に来なくなりました。

 

 

そんなある日、私はお局ちゃんに文句を言っていた先輩(先輩Aとします)とぶつかっ

てしまいました。

常務に、お局ちゃんの事を聞いていた時に、A先輩が帰って来ました。

 

その時、お局ちゃんを侮辱するような発言をしました。

あいつはお金を取っていないのに、何故そんなことを言うのか?

キレました。私は、そばに有った書庫に怒りをぶつけました。

書庫のガラスは割れ、引き戸がヘコみました。

「先輩、なんでそういうことを言うねん、謝れ」

先輩が掴みかかって来ました。

つかみ合いになり、殴り合ったと思います。周囲に止められました。

相手をつかんだ時に私は驚きました。

右腕が自分の血で真っ赤になっているではありませんか。

書庫を殴った時に、ガラスで腕を切っていました。

それでも引けない状態でした。 

 

常務が「お前ら、なにしとんじゃぁ」と一喝すると、先輩は矛を収めました。

アドレナリン全開な私は「先輩、横から入ってくんなやぁ~」と言ってしまいました。

「誰にものゆうとんじゃぁ」

膝蹴りが横っ腹にきれいに入り、1発KOです。

「書庫に謝れ、ボケがぁ」

書庫に謝らせられました(笑)

当時、私は自分の腕っぷしには、かなり自信がありました。でも所詮は人間でした。

ゴリラには勝てない。このゴリラがここまで強いとは、、、誤算でした。

 

 

その後、病院に担ぎ込まれ、腕を6針、あばらが2本折れてました(笑)

右腕、右袖はガラスで切れて、血で真っ赤っになっていました。

 

後日、同僚からは、「あの常務に、ようあんな口聞けるなぁ。」と褒めちぎられまし

た。この常務は、私の中学の先輩で、元々ご近所さんだった人です。市内では超有名な

悪い人でした。

アホな私は鼻高々でしたね。でもあのゴリラには逆らわないと心に決めました。

今でも絶対服従をしています。 

大笑の勲章 誰のために闘ったの?

 

念のため2日程、入院をしました。

思いのほか傷が深かったのと、アバラが痛い。めちゃくちゃ痛い。

 

私は退院後、社長と常務にこってり絞られました。

今でも、常務の部屋に、私がへこました書庫は残ってます。

「ヘタレの大笑が、俺に挑んできて返り討ちになった時の記念品や」と皆に言っている

そうです。👈なんかムカつく

 

 

常務の部屋で、あの書庫を見るたびに、あの日の出来事を思い出します。 

凹んだ書庫を未だに使ってくれてるとは、ゴリラもいいとこがあります。

 

私の退院後も事務所にはお局ちゃんの姿はありませんでした。

結局、私は何のために大けがをしたのでしょうかね。

まぁA先輩が気に入らなかっただけなんですけどね。 

 

 指令発令 お局ちゃんを呼び戻せ

お局ちゃんはあれから姿を見ていません。

会社は呼び戻す気はあるが、本人が電話に出てくれないそうで、話が出来ないので困っ

ているところだったようです。

常務「お前、まだ無理出来へんやろ?お局ちゃんの家行ってきてくれや」

大笑「嫌ですよ。仕事せんと、3日も働いてないのに。仕事終わってから行きます」

日給の辛いところです。

常務「あかん、早う行け。また蹴り入れるぞ」

大笑「はい、、、行きます」

常務「そうそう、社長からの伝言。お局ちゃんが呼び戻すまで会社にこんでええ」

私はその時は、解ってませんでしたが、社長・常務の配慮だったんでしょうね。

私がお局ちゃんの事を一番気にしているし、ケガで仕事が出来ないのも分かっていたか

ら、休み代わりに指令が出たのでしょう。

ただ、給料が、、、

 

考えても仕方ないので、住所を聞き、家に直接行きました。

住宅地にある古いアパートでした。部屋の前で深呼吸をし、ノックしました。

お母さんが出て来ました。派手な服装の人でした。

私の腕に包帯、顔には絆創膏の姿に驚いた様子でしたが、会社の使いで来たことを伝

え、お局ちゃんと話をしたいとお願いしました。

買い物に出ていて、もう帰るので、家の中で待つように言われました。

「外で待ちます」 

そこには私の苦手な空気、 いや嫌いな空気を感じたので、外で待つことにしました。

 

ドアの横には、お局ちゃんの子供の頃に乗っていた自転車や、ままごとセットがさみし

そうに置いていました。ひらがなであいつの名前が書いてました。

偏見を持っているつもりはないです。みんながそうではないのですが、私の周りの人間

で、グレていた奴と同じ家庭の雰囲気がしました。

あいつ、どんな子供やったんやろ?どんな風に育ってきたんやろ?

家に来たことを少し後悔しました。

「いらんもん見てもたなぁ」そう思ったのを覚えてます。

 

お局ちゃんの過去と陽はまた昇る

しばらくして、お局ちゃんが帰って来ました。

お局「えっ、どうしたん」

大笑「お前、この後の予定は?」

お局「何にもないけど、怪我してるやん、どうしたんよ」

大笑「お母さんに、今日は遅くなるって言うて来い。」

 

私は、お局ちゃんを車に乗せて、海に向かいました。

お局「どこ行くんよ、教えてよ。それと怪我はどうしたん?」

大笑「後で話す。それよりなんで会社に来うへんねや。」

 

やっぱ、落ち込んだ時は夕焼けでしょ(笑)👈単純王

 

ここは、昔、私が友達とよく遊んでいた場所です。

夕日が本当に綺麗に見えるところで、運が良ければ海も赤く染まるのです。

アホなりに考えた、励ます方法でした。

大笑「綺麗やろ。ここの夕焼けは」

お局「うん。綺麗な。これを見せたかったん?」

大笑「そう、元気でたか?」

お局「ありがとう。ちょっと元気出た。」

大笑「ちょっとか、、、」

お局「うん、ちょっと」

 

それから、しばらく話をしました。

先輩と喧嘩して、怪我をしたこと。みんなが心配して待っていること。

会社に来ないのは負けを認めることだと文句も言いました。

 

気が付けば、辺りは暗くなり、夜空には三日月が顔を出してました。

そして、一番聞きたかったことを、切り出しました。

ご両親は、彼女が小学生の頃に、離婚されたそうです。

親父さんは、浮気ばかりしていて、女を作って出て行ったそうです。

それからお母さんは彼女を育てるために、昼にパート、夜は夜のお店で働いて育ててく

れたそうです。

大笑「凄いお母さんやな。感謝せなあかんぞ。」

お局「うん」

大笑「兄弟は?」

お局「一人っ子」

大笑「寂しかったな。よう頑張ったな」

お局「うん」

私も似たような境遇で育ってきました。でも私には姉弟がいました。

でも、あいつは、いつも一人だったんです。

そういう家庭の独特の雰囲気を、彼女の家で感じたのでした。

感情移入してしまう、私の悪い癖が出てしまいました。

 

大笑「ゴメンな、気付いてやれんで」

私は彼女は普通の家庭の女の子だと思い込んでいました。でも、私と一緒で、子供の頃

から、しなくていい苦労を背負って、必死に自分を押し殺して生きてきた人間だったの

です。

しばらく、私は言葉が出ませんでした。

その間、ずーっと彼女はすすり泣いていました。

ふと、自分が彼女を会社に呼び戻すために来ていることに気付きました。

忘れていました(笑)

 

大笑「俺もな・・・」私は自分の生い立ちの話を彼女にしました。彼女はうなずきなが

ら、聞いていました。

大笑「俺な、お前が似たような境遇の人間で良かった」

お局「えっ?なんで?」

大笑

「話が早いからや。会社に戻ってこい。あそこには社長や常務がおる。あの人らの生い立ちを聞いたら、自分の負い目なんかアホらしなるぞ」

お局「うん、、、」

大笑

「そうや、俺があんな会社におりたい理由はそこや。もうお前も一人ちゃうやん。社長も常務も助けてくれる。頼りないけど俺もおる。いや俺が助けたる」

 

彼女は、私の肩に顔を当てて泣いていました。

折れたあばらが痛かったです。それにドラマみたいに私の胸で泣いて欲しかったな。

本当に絵にならん男です(笑)

「見てみ、お月さんが綺麗ぞ」

 

 

空では綺麗な三日月がニッコリと笑っていました。

 

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