【鬼】雀の涙と鬼の涙


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今週のお題「鬼」

おっかない鬼

私達、家族が夜逃げ同然で、母親の実家に転がり込んでいた頃の話です。

祖父は、寡黙でいつも険しい顔をしている人でした。

祖母も、祖父の顔色を見て、動ける人でした。

ですから、私は祖父と話をすることもあまりありませんでした。

とにかく、無愛想で、怒ると鬼のように怖い人でした。

 

私の親父は、多額の借金を作り、蒸発し、音信不通。

 

ある日、私たち家族の今後の話を、親族が集まり話し合っていました。

話し合いが終わり、親族全員が集められました。

私がその場に行くと、母親は泣いていました。

子供の私でもわかるくらい、場の雰囲気も重々しかったです。

 

その場で、祖父が珍しく口を開きました。

それは、私達姉弟へ向けた言葉でした。

 

「お前らの親父は、最低の男や。人間として失格や。ワシは絶対に許さん」

「お前らの父親は、もう死んだと思っとけ」

 

鬼の形相でした。

 

叔父や、叔母が反論していました。

珍しく祖母も、祖父に対して怒っていました。

母親は、更に号泣していました。

従姉弟たちは、鬼の形相の祖父から目を背けていたそうです。

不思議と私は、祖父を睨み返していました。

祖父から目を背けると、泣き出してしまいそうだったからです。

 

雀の涙と鬼の涙

 

数日後、母親から祖父の真意を聞きました。

そんなことはどうでもよかった。

私は、親父が許せませんでした。さすがに死んだとは思えませんでしたが、、、

祖父が私の心の声を代弁してくれた。

祖父に対して代弁してくれたお礼が言いたいくらいでした。

 

ある日、祖父に頼みました。

「じいちゃんと風呂に入りたい」

風呂で祖父の背中を流したかった。

そして、この前のお礼を言いたかった。

 

祖父の背中を流しながら

「じいちゃん、俺は親父がおらんでも寂しくないで。もうちょっと、この家におらしてな。」

祖父に対しての、雀の涙ほどの恩返しでした。

祖父は、こちらを振り向き、私の頭をクシャクシャに撫でながら

「いつまでもおったらええ、ずーっとおれ」

顔ははっきり覚えてませんが、泣いていたように思います。

じいちゃん(鬼)も、泣くんやなぁと思ったことはよく覚えています。

 

あの日、祖父は

「ワシが今日からお前たちの親父になったる。もう心配するな」

私達にそう伝えたかったそうです。

 

その後、祖父と風呂に入ることは、日課になりました。

そこで、色々な話をしてもらい、色々な事を教えてもらいました。

そして、滅多に見れない、祖父の笑顔も見せてもらいました。

私の古い考え方は、祖父の影響だと思います。

 

私にとって祖父は「鬼」であり、もう一人の「親父」でした。

そんな祖父も、私が中学生になる前に他界しました。

生前、祖父に良く言われた言葉です。

 

「大笑、お前は笑って生きるんやぞ」 

 

私は今もその言葉は、忘れてはいません。

じいちゃん、今日も楽しく過ごしたぞ。笑って過ごしたぞ。

きっと、笑って生きることが出来てるぞ。

 

何か、じいちゃんと飲みに行きたくなりました。 

 

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皆さん、注目ですよ