あいつが居たから 中学生編


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こんにちは、大笑です。

皆さんは、悪友っていますか?

私には中学時代からの友人で、一緒に悪さばかりしてきた仲間の1人で、今も頻繁に遊

んでいる奴がいます。

実は、年末に、緊急入院をしました。

大したことにはならず、今は普通に生活しています。

 

お互い、中学時代、周囲からは不良と呼ばれ、腫物のように扱われて来ました。

でも、あいつが居たから、今の自分がいるのかも知れない。

 

あいつが居たから

中学2年生の冬のある日

夕飯を済ませ、のんびりとテレビを観ていたら、電話のベルが鳴り響く。

あいつからの電話だとすぐにわかった。

電話に出ると、10円玉が落ちる音。いつもの公衆電話からだ。

「今、着いた」

息が切れ切れのあいつの声。

「おかん、出てて来るわ」

「学校までに帰ってきいや」👈親のセリフではないですね( ̄▽ ̄;)

「わかってるわ」

いつもの母子の会話。

 

公園に着くと、あいつがベンチに座って手を振っていた。

この時間の呼び出しは、たいがい、親父さんと喧嘩をして家を飛び出したときだ。

暗い公園でもわかるくらい、顔は赤く腫れあがり、泣いたのだろう、目が充血してい

る。

あいつは、それでも親父さんを悪くは言わない。

親父さんは、普段は温和な人だけど、酒が入ると豹変するようだ。

「俺の出来が悪いから、殴られるんや。しゃーない」

作り笑いと、いつものセリフ。

でも、知っている。

あいつには、妹と弟がいる。

親父さんが、二人に危害を与えないように、悪者を演じている。

自分が殴られたら、それで済む。

いつも、親父さんが寝たのを確認してから、公園に出てきている。

やさしいやつだ。

あいつが少し大人に思えることがあった。

 

しばらく、くだらない話をしてから、あいつのポケットからいつもの奴が出て来る。

ソニーの「ウォークマン」。あいつの宝物だ。

ウォークマンの中には尾崎豊の「15の夜」。

イヤホンを互いの片耳につけ、「15の夜」を無言で聞いた。

 

冷たい風 冷えた身体 人恋しくて

夢見ているあの娘の家の横を サヨナラつぶやき走り抜ける

闇の中ぽつんと光る 自動販売機

100円玉で買えるぬくもり 熱い缶コーヒー握りしめ

恋の結末も解らないけど

あの娘と俺は将来さえ ずっと夢に見てる

大人達は心を捨てろ捨てろと言うが 俺はいやなのさ

退屈な授業が俺達の全てならば

なんてちっぽけで なんて意味のない なんて無力な 15の夜

 

盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま

暗い夜の帳りの中へ

覚えたての煙草をふかし 星空を見つめながら

自由を求め続けた 15の夜

 尾崎豊 15の夜 一部抜粋

 

 

歌を聞き終わると、あいつはいつも近くの自動販売機に行き、熱い缶コーヒーを買って

くれる。 

缶コーヒーの温もりを握りしめ、いつものセリフ。

「お前、何回ゆうたらわかるねん。コーヒー飲まれへんのや。おしるこにせえゆうとる

 やろが、アホが」 

そう言いながら、苦くて、マズい飲み物を、飲み干して、家路につく。

 

帰り道、二人は肩を組んで、

「もし、妹や弟が殴られたら、俺に言え。親父さんをぶち殺したる」

「わかった。その時は頼む」

「だから、負けるなよ。我慢せえよ」

「いつも、すまんな」

 

あいつは、俺が、いつも無理して付き合っていると思っている。

それは違う。俺の家庭も複雑だ。

あいつと話していると、互いの辛さを分ち合える気がした。

この年頃に、自分の不幸話を話せる相手は少ない。

「俺だけが辛い訳じゃない」

そう思えて、楽になった。

 

 

 

「また明日な」

あいつは、ウォークマンをポケットから出し、イアホンをつけた。

「15の夜」を聞きながら、暗い夜の帳に消えていった。

親父さんにプレゼントしてもらったウォークマンはあいつの宝物だ。

「このウォークマンと尾崎があれば、それでええ」

やっぱり、あいつは親父さんが大好きなんだろう。

 

俺は、あいつの親父さんの話が好きだ。

俺には、親父が居ない。

だから、親父が居たらどんな感じなんだろうか

喧嘩ばかりするのかな?

殴られたりするのかな?

笑って話せるのかな?

「お父さん」「オヤジ」どう呼ぶんだろうか?

親父は自分をどう呼ぶんだろうか?

 

いつも、無いものねだりをしては、少し笑っていたことを思い出す。

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